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あなたのまわりの小さなともだちについて

あるいは、この如何ともし難い小さき有機体が何を思ふか

2013年をウイルス目線で振り返る

The kind that make you sick!!!

我らがビンセント・ラカニエロ先生がウイルス学的に2013年を振り返っていらっしゃるので、ざざっと茶々をいれてタイトルだけ読んでみましょうか(TWiVを聞いてないのがばればれですな)。

RNA干渉による抗ウイルス作用

ノーベル賞が2006年ですか・・・哺乳類細胞でのRNA干渉の抗ウイルス作用は、とてもパワフルな自然免疫の作用に隠されてしまい、なかなか研究が進みませんでした。が、ノダムラウイルスのB2たんぱく質のもつ抗RNA干渉作用がウイルス増殖に必須であることが示され、論争に一応の終止符が打たれました。

RNA Interference Functions as an Antiviral Immunity Mechanism in Mammals
Antiviral RNA Interference in Mammalian Cells

しかし、ほぼ同時に、RNA干渉は自然免疫関連たんぱく質の発現を抑え、過剰な宿主応答を抑制している(場合もある)という報告もなされ、ウイルスと宿主の組み合わせによって状況は変わると言った方が良さそうですね。

Cell Host and Microbe - Reciprocal Inhibition between Intracellular Antiviral Signaling and the RNAi Machinery in Mammalian Cells

MERS-CoV

イギリスで突如発生し、その後中東諸国を中心に散発的に存在していることが分かったMERSコロナウイルス感染症。2002年の中国でのSARS-CoVアウトブレイクに比べ、各国機関の迅速な対応・・・と思いきや(ごにょごにょ)。と、とにかく、研究者たちの注目度は高く、あっというまに全ゲノムが解読されるーの、レセプターが同定されるーの、自然宿主が同定*1されるーの、動物モデルが樹立されるーので、追いかけるのも大変な一年でした。

Isolation of a Novel Coronavirus from a Man with Pneumonia in Saudi Arabia*2
Molecular basis of binding between novel human coronavirus MERS-CoV and its receptor CD26
Structure of MERS-CoV spike receptor-binding domain complexed with human receptor DPP4
Identification of MERS-CoV in dromedary camels : The Lancet Infectious Diseases
Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus in Bats, Saudi Arabia - Volume 19, Number 11—November 2013 - Emerging Infectious Disease journal - CDC

胎盤の栄養芽細胞が提供する抗ウイルス作用

あーこれASV 2012で聴いたわー。前から知ってたわー。
流行りのmiRNAの抗ウイルス作用研究の中でも、胎盤の栄養が細胞がexosome中にmiRNAをごそっと投入し、それをphagocytosisした細胞(胎児)が抗ウイルス状態になるというコンセプトがひときわ輝いていましたね。

Human placental trophoblasts confer viral resistance to recipient cells

T7バクテリオファージが歩く

これは動画を見た方が早いかな。えっあの足って月着陸船みたいに固定じゃなかったの!という驚きですね。Cryo-EM/ETの発達で、ウイルスの形や挙動にまつわる新発見がどんどん増えてきているように思います。


T7 Virus Walking Across a Cell - YouTube

The Bacteriophage T7 Virion Undergoes Extensive Structural Remodeling During Infection

cGASの驚くべき役割

細胞外や細胞質に存在する異質なものを認識するパターン認識受容体のうち、細胞質に存在するDNA(普通は核内にしか存在しない)を認識する分子は同定されていませんでしたが、ついに見つかりました。しかも、自然免疫を誘導する他のシグナル経路と異なり、環状GMP-AMPを介したシグナル伝達という新しさも光りましたね。

Cyclic GMP-AMP Is an Endogenous Second Messenger in Innate Immune Signaling by Cytosolic DNA
Cyclic GMP-AMP Synthase Is a Cytosolic DNA Sensor That Activates the Type I Interferon Pathway

ウイルスと宿主のいたちごっこ

増殖サイクルの早さから、ウイルスの進化はとても急激です。しかし、宿主も黙ってはいられません。この研究では宿主の特定のたんぱく質(ウイルスにとってはレセプター)が、ウイルスの感染を避けるように変異していった可能性が示されています。ウイルスの進化モデルはいくつもありますが、宿主も同時に進化していったことを示したのは初めてじゃないでしょうか。この論文のあと、複数の種にまたがってレセプターを比較する研究が流行しましたね。

PLOS Biology: Dual Host-Virus Arms Races Shape an Essential Housekeeping Protein

パンドラウイルス

はいはいアメーバアメーバ。巨大ウイルス巨大ウイルス。蝉コロンさんのとこで解説記事あったんだけどなぁ。

Pandoraviruses: Amoeba Viruses with Genomes Up to 2.5 Mb Reaching That of Parasitic Eukaryotes

CMVをベースにしたSIVワクチン

HIVの治療法や治療薬は徐々に樹立されつつありますが、効果が限定的で、高価で、患者への肉体的負担も大きいことが課題です。そのため、ワクチンベースで患者の免疫応答によってHIV感染をコントロールする方法が研究されています。CMVをベースにしたワクチンもそのうちの一つです。SIV(サルのHIV)を使い、ワクチンによりウイルスを排除できることが示され、今後のエイズ療法の有力でリスクの少ない選択肢として注目が集まりそうです。


NEIDLに行ってきました


Threading the NEIDL - Inside a BSL-4 Lab ...

ボストン大学がどーん!と新設したBSL4(P4)研究所が公開され、TWiVのメンバーが見学した時の動画が公開されてます。BSL4としての稼働はまだ先のことですが(年内?)、この手の施設が新しく建てられるのはいいことですね。長崎はどーなったんでしょ?

それでは

みなさん、良いお年を!(アメリカはまだ2013年)(間に合った!)

*1:遺伝子断片だけで同定とか言うなYO!という声もある

*2:ちなみに、ウイルス分離の論文はH5N1インフルエンザウイルスのデュアルユース問題で世界を騒がせたファウチャー博士のラボから出ました