あなたのまわりの小さなともだちについて

あるいは、この如何ともし難い小さき有機体が何を思ふか

超簡単!おうちで作る超巨大ウイルス!

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超巨大ウイルスについての記事をのんびり書いている間に、もっと大きいパンドラウイルスなるものが見つかってしまいまして、あうあうな感じですけど旬が過ぎる前に公開できるといいですね(書いている自分への励まし)。

今回ご紹介する論文はこちら、安定のPLOS Pathogens。
Membrane Assembly during the Infection Cycle of the Giant Mimivirus
Mutsafi Y, Shimoni E, Shimon A, Minsky A (2013) PLoS Pathog 9(5): e1003367. doi:10.1371/journal.ppat.1003367

超巨大ウイルスの中では一番最初に見つかった、ミミウイルスさんのお話です。今となっては小さくさえ感じる直径~750nm*1ですが、当時はそりゃもうびっくりですからね。んで、このミミウイルスさんの宿主であるところの単細胞なアメーバさんのサイズは20μmくらいで、体積で0.003%の大きさのウイルスが出てくるわけです。1回につき1000個くらい。つまり、体積の3%がウイルスが出て行くときに奪われるわけです。身長180cmくらいの人がピンポン球を1000個おえっと吐き出すような感じですね(喩えが汚い)。

中身はその辺の細胞質を調達したとしても、どうやってピンポン球の材料調達すんねんってツッコみたくなるのが人のサガというもの、研究者も考えることは同じです。こんなでっかいウイルスが効率良く作られるためには、相当うまいことアメーバさんを利用しているに違いない!んじゃサイセンタンギジュツを使って丸裸にしてみました、というのが論文の主旨でございます。論文の模式図があまりにきれいで良くできているので*2、今回はそのまま掲載しました。

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引用元:
Figure 8. Mutsafi Y, Shimoni E, Shimon A, Minsky A (2013) PLoS Pathog 9(5): e1003367. doi:10.1371/journal.ppat.1003367

ちょーざっくり説明しますと、アメーバさんの細胞質をお借りしまして、ウイルスのDNAがごりごり複製されていきます。この時に、てんでばらばらに増やそうとすると効率が悪いのでぎゅっとまとめてコピーするのですね。これをウイルスファクトリーと言います(図中の灰色の部分)。次に小胞体あたりからごっそり脂質二重膜を借りてきて、これをバラバラにしたりくっつけたりして、びろーんとながい膜を作ります(青色の部分が膜)。んで、先っちょの方から何となくウイルスタンパク質(黄色)をくっつけて、正二十面体構造に膜を閉じ込めちゃいます。あとは、中身(灰色=ウイルスDNAとその他の部品)をぶちこんで、切り離しておしまい。その後、毛が生えてきて見慣れたミミウイルスさんになります。簡単ですね。おうちにある材料*3でできちゃう!

大きさ記録更新のパンドラウイルスさんは、電子顕微鏡写真で見るとミミウイルスさんとはまったく違う形をしています。また、ウイルスの殻を作るのと、中身を完成させるのを同時にやってるらしいです。小さいウイルスに比べ、大きいウイルスは、ウイルスを作る部分の制約が大きそうですが、そんな中でも複数のやり方があるというのは夢が膨らみますね。お腹は膨らみませんが(ブラックジョーク)。

パンドラウイルス見つけた人たちはまだまだ何か隠し球があるそうなので、トトカルチョでもしてみると楽しいと思います。僕は別の(22日追記 id:ka-ka_xyzさんありがとんです)真核生物を宿主とする巨大ウイルスに賭けてみましょうか。

*1:余談ですけどひょろ長いことで有名なエボラウイルスの長さもだいたい同じくらいです。意外とやるなエボラさん。

*2:模式図だけじゃなくて、写真が綺麗な論文なのでおすすめです。オープンアクセスだし。

*3:おうちというか、あなたの細胞にあるもの。アメーバさんじゃないと作れない可能性は高いですけど。