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あなたのまわりの小さなともだちについて

あるいは、この如何ともし難い小さき有機体が何を思ふか

エボラ出血熱(エボラウイルス病)を正しく怖がるために——(2)最新の論文を紹介するよ

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本当は治療薬特集とかまとめとかしようと思って、自分の論文*1書いてる合間にこそこそ論文読んでたんですけど、あちこちでまとめとか解説とかあるんでどーしよっかなーからの、すっごく迫力のある論文が出たのでそちらを紹介することにします。Scienceから。著者のうち5人がエボラで亡くなっているということで追悼記事も出ています。

論文本体はこちら。
Genomic surveillance elucidates Ebola virus origin and transmission during the 2014 outbreak
タイトルを翻訳すると『サーベイランスによって明らかになった、2014年にアウトブレイクを起こしたエボラウイルスの起源と伝播』

2014年3月にシエラレオネ政府病院、ハーバード大学、ブロード研究所がケネマという都市で立ち上げたエボラのサーベイランスが、いきなり5月に本物のエボラ患者を見つけてしまったところから論文は始まります。その後のシエラレオネの混乱はご存知の通りですが、著者達は、5人の犠牲者を出しながらも各地でサンプル(患者血清)を収集し、シエラレオネのラボでRNAを抽出、アメリカに送って解析を行います。

集めたサンプルは患者78人から全部で99。同じ患者から採血したものも含みます。これを全部シークエンスして、それぞれのサンプル中にいるエボラウイルスの(ほぼ)全長RNA配列を決定しました。エボラウイルスはマイナス鎖RNAを遺伝子に持っていて、だいたい1万9千塩基くらいの長さなので、最新のシークエンサーにかかればお茶の子さいさいです。最初の15サンプルを使って条件を決めて、残りの84サンプルは一気に解析しました。使ったのはIllumina社のHiSeq2500。1億円以上する最新マシンです。

配列解析後の遺伝子系統解析もスマートで、少し前の論文でごたごたしていた中央アフリカエボラウイルスとの関係もすっきり解決。今回出現したウイルスは中央アフリカから来たものが、ギニアを通してシエラレオネにやってきた一連のものであるということが分かりました。Fig 2と3の系統樹を見ると、ギニアで採れたウイルスからシエラレオネのウイルスが分かれていっているのが良く分かりますね。

さらに細かく見てみると、シエラレオネのウイルスには初期の段階から2種類のウイルスが存在していることが分かります。これは2種類のウイルスが、同時にギニアから(感染拡大のきっかけとなったと言われているエボラ患者の葬式を介して)シエラレオネに侵入してきて、人々の間で広がったと考えると辻褄が合います。また、シエラレオネ内での伝播が一様に東から西へと起きていることも分かりました。10218番目の遺伝子変異を持つウイルスはシエラレオネ内で出現し、変異は時間を経て、西へ移動するに従って安定していることから、ウイルスの伝播を示す最適な指標となっています。

ウイルスの変異スピードを見てみると、今回のエボラウイルスはとても速く遺伝子変異を起こしています。この事実から何か結論を導くためにはさらなる実験が必要ですが、アウトブレイクが収束しなければ、(結果として何が起きるかは分からないものの)より人間に適応したエボラウイルスが出現する可能性があると、筆者達は述べています。

さて、まず気になるのは今回見つかった遺伝子変異によって、実戦投入されているZMappの効きに変化があるのかないのか、ということですよね?では次のNatureから出たばかりの論文をどうぞ。

Reversion of advanced Ebola virus disease in nonhuman primates with ZMapp
タイトルは『ZMappによる、エボラウイルス病が進行した霊長類の回復』

Figure 3に今までサルモデルで使われていたエボラウイルスKikwit株と今回のアウトブレイクで採れたGuinea株の比較があります。赤矢印で示されているZMappのエピトープはGuinea株でも変異していないですね。近傍に2つアミノ酸変異がありますが、ZMappの結合や中和活性には影響していない、と。

それでは先ほどのScience論文に戻り、シエラレオネの株を見てみましょうか。サプリのTable S4です。ZMappエピトープ近傍には、Guinea株でも見られた503番目のアラニンからバリンへの置換以外にはアミノ酸変異は見られません。てことは、ZMappの効き目を損ないそうな変異は今のところ見つかっていない。一安心ですね。

取り急ぎ、1時間くらいで論文読んで、1時間くらいで書いてみました。深い話はまたの機会があればってことで。

*1:エボラじゃないですー